学園異能バトル ゆるコスTRPG

生徒会長が死んだ。よくあることなので感覚が麻痺してきたが、生徒会長が死んだのだ。
始まる犯人捜し。立候補する三公達。混迷の中、行われる所信表明が選挙の始まり。

まずは一当て。力を測ることこそが何よりも重要。
そう言わんばかりに武力による情報収集に走る副会長陣営。
対峙するは風紀委員長【九瀬 十一郎】、交通委員長【灰喰 冬湖】。
「誰よその女！」――切り裂くような悲鳴とともに、副会長【春日部 寧々子】は弾劾する。
あまりにも自然な一撃。それに反応することができず、【九瀬 十一郎】は浮気男と、【灰喰 冬湖】は泥棒猫と、それぞれ汚名を負うことになってしまった。

「生徒会長の魂の所在を教えていただきますわ！」――そう声を上げる【三社院・V・伊織】。傍らに立つは【新都ヶ原 テオフラストゥス】と【■■ ■】。
一対三の圧倒的不利で袋叩きにされる【メルモデウス】。敢え無く敗北して拷問の憂き目に遭う。
拷問の結果、明かされる驚愕の真実。
生徒会長【天上下 那由多】の魂は【メルモデウス】が地獄の悪魔へ売り飛ばしていたというのだ。
魂を取り戻すために悪魔と契約を交わし、【メルモデウス】に身を任せる【三社院・V・伊織】。その横顔には、盲愛と狂気と諦念が綯い交ぜで浮かんでいた。

「お前が会長殺害の共犯というのは本当か」――問い詰める【九瀬 十一郎】と【灰喰 冬湖】。
それに対し【三社院・V・伊織】は自身のバイオリンを見せびらかすように掲げる。
彼女は【天上下 那由他】の骨と皮と筋で以ってバイオリンを作り上げ、
魂を込めることで死者の悲鳴という名の音色を奏でる能力者であったのだ。
彼女の狂的な愛情に気圧されたのか一歩遅れを取る【九瀬 十一郎】と【灰喰 冬湖】。執念虚しく撤退する。

決戦前夜。陣営会議にて【春日部 寧々子】の在り方を問い質す【新都ヶ原 テオフラストゥス】。
錯乱し包丁を手に自傷に走る彼女を必死で阻もうとするも、自害の速度には届かない。
副会長は落命した。救命は適わない。残されたモノは彼女の悲願の『情操教育マニュアル』。
せめてもの手向けとしてその想いを引き継ぐ【新都ヶ原 テオフラストゥス】であった――

最終決戦。
全校生徒へのリサイタルを目論む【三社院・V・伊織】。
決戦の場へ向かう副会長・風紀委員長連合。
最も生徒会長と縁深かった【九瀬 十一郎】。彼に付き従う【メルモデウス】。
【三社院・V・伊織】の望みを叶えるため、【■■ ■】は二人の足止めに死力を尽くす。
幸運か、奇跡か、はたまた執念の賜物か。二人は【■■ ■】を打倒し、間一髪で決戦直前のホールへと滑り込んだ。
二陣営が対峙する、その最中。突如として生徒会長の殺害を明かす【騙霧 縁】。
想定外の告白にショックを受け精彩を欠く【九瀬 十一郎】であったが、
【灰喰 冬湖】の我が身を顧みない能力行使の助けもあり、際どいところで勝利を収めた。
その背後では【メルモデウス】が真犯人の【騙霧 縁】をちゃっかり口説き落とし、百合の花を咲かせていた。

――どんなに激しい祭りであれ、終宴は訪れる。
生徒会長【新都ヶ原 テオフラストゥス】、副会長【メルモデウス】。
放送委員長【騙霧 縁】に風紀委員長【九瀬 十一郎】。
庶務の【九頭竜ナーガ八雲】を以って、第148期の生徒会役員が決定した。
……全体的に人数が足りないような気がするが、そこはブラック労働で補うのだ。

全てが終わった後。【新都ヶ原 テオフラストゥス】と【九頭竜ナーガ八雲】は墓参りを行っていた。
『情操教育マニュアル』の実現に邁進することを誓う【新都ヶ原 テオフラストゥス】。
そんな彼の姿を、【春日部 寧々子】の霊が草葉の陰から見守っていた。
同じ時期、ショッピングモール。そこへ現れるは【九瀬 十一郎】【騙霧 縁】【メルモデウス】。
能力の反動で昏倒し眠り続ける【灰喰 冬湖】の分も取り返すように買い物を楽しむ彼らの姿は、
その後の天上下学園の繁栄を示すかのようであった――


＜補記＞

何かがおかしい。数が合わない。生徒会役員はもう一人いたはずだ。
――【メルモデウス】を袋叩きにした三人目とは誰だ。
――【九瀬 十一郎】が最終決戦の参戦に遅れたのは誰の仕業だ。
――なぜ私達は彼のことを覚えていないのか。
世界から零れ落ちた一欠片。唯一思い起こせるのは【■■ ■】という、その音の並びのみ。
ああ、しかし、これも天上下学園にはよくあることなのか？
わからない。わからない。ただ私は、確かに在ったはずの彼のことを書き記すのみ。

――天上下学園第148期 生徒会書記